「あそこの場所よかったのに、ホームが今度建つんだって」
近所のおじさんが教えてくれた。
あそこの場所、とは、小学校への通学路の一角。
林のように木が生い茂り、たくさんの鳥が集まりさえずり、虫たちが集い、自然の香りと日陰を与えてくれていた場所。
脇を通るとなんだかほっとし、自然の音を提供してくれて、私は無意識に歩く際の目印ならぬ耳印にしていた場所でもあった。
今朝、朝日浴ウォーキングの際に通学路を通ると、既に工事用の白い幕で覆われていた。
雰囲気が変わった。
音がない。鳥たちのさえずる声や少しの風でも葉っぱ同士がこすれ合う音がしない。
匂いも変わった。木や葉っぱの香りがしない。
私の現在住んでいる場所は、いわゆるベッドタウン。
もともと住宅街ではあるのだが、最近追い込むようにここそこに建売の家やマンションが出来ている。
それでも隣や近くの駅周辺に比べれば、道幅も広めに確保してあり、公園が多い。
知覚には田んぼの拡がる土地も残されている。
今朝は結局田んぼのある方まで足を延ばし、たくさんの鳥たちのさえずりと広く空間の拡がる澄んだ空気感にほっとしたものだ。緑の匂いがする。
私は朝の透明感のある澄んだ空気を感じるのが昔から好きだ。
朝だと鳥たちもさえずり、緑の匂いも一層感じられる気がする。
今まであったものがなくなると
「なんでなくなっちゃうんだろう」
「どんどん自然がなくなっちゃう」
なんて惜しむ声が出てくる。
が、ちょっと待てよ。
そもそも、今、ここに住居を構えている私たち。
ここも元をたどれば、その惜しまれた土地であり、自然であったのだ。
わが物顔でいるが、後から開拓されてしまうことを嘆いているが、
そもそも私もこの土地に住まわせてもらっているんだなぁ。
そんな想いが心に染みてきた今朝だった。
ありがとう、地球。
お邪魔してます、地球。